帽子の肖像 Profile.24
みうらじゅん
帽子が本当に似合う人。それは格好良く年齢を重ねた大人かもしれない。
スタイルの変遷、年輪が醸し出すものが、帽子をかぶった肖像に現れる。
連載「帽子の肖像」では、2枚のポートレート写真、そして5つの共通質問に対する短い言葉から、帽子の達人たちの肖像を浮かび上がらせます。
今回はさまざまな“マイブーム”を世に仕掛けてきた、みうらじゅんさんが登場。
みうらさんが帽子に求めることとは?
みうらじゅん
“ようやく“アウト老”には成れた気がします(笑)”
あなたが帽子をかぶり始めた時のことを教えてください。
小学校高学年の頃にマカロニ・ウエスタン映画の大ファンになり、主人公がかぶってるツバ広の帽子が欲しくなったんです。中学生になると「マンダム」のCMで、チャールズ・ブロンソンが大ブレイクしまして、ますますテンガロンハットが欲しくなったわけです。アウトロー的なものに憧れもありましたしね。似たような帽子は買って貰ったんですが、しっくり来なくて。頻繁にかぶるようになったのは50代からです。まあ、トシもとってヒゲも生えたし、ようやく“アウト老”には成れた気がします(笑)。
あなたが憧れる(憧れた)帽子をかぶる人とは?
やっぱりチャールズ・ブロンソンや、マカロニ・ウエスタンのヒーローたちですね。30代後半に「ブロンソンズ」っていうユニットを俳優の田口トモロヲさんと組むんですけど、二人して日光ウエスタン村でテンガロンハットを買ったもんですよ。近年来日したライブで見たボブ・ディランの ポーラーハットってやつも欲しくなって、それを探しにCA4LAに行ったこともあるんですよ。似たのがあったので“試帽”してみたけど、僕が似合うようになるまでにはまだ時間がかかりそうでした。昔から憧れの人がかぶってる、それに似た帽子を探しているわけです。
あなたが帽子をかぶる時に気をつけていることを教えてください。
一番は風で飛ばないようなものを選ぶことです。数年前に氣志團万博に呼ばれてライブをしたんですけど、その時にボブ・ディランが映画「ラスト・ワルツ」でかぶっていたみたいな白くてデカいハットを、安斎肇さんに教えてもらった帽子屋さんに特注で作ってもらったんです。でも野外コンサートだったもので、帽子が飛ばないか気が気じゃなくて、演奏も間違えっぱなし(笑)。そんな僕の頭にピッタリ合うサイズのものはなかなかないし、かぶって飛ばない帽子に出会った時は必ず買うようにしていますね。
今日かぶっている帽子について、教えてください。
これはCA4LAのこのお店(表参道店)で買った帽子です。サイズがピッタリのやつに出会ったんですよ。しかも「折り畳める」って聞いて。そういや、その昔CA4LAさんとコラボレーションしたこともありましてね。それはハットにロン毛のウィッグが付いていて、サングラスかければ「誰でもみうらじゅんになれる帽子」だったんです。今回それをかぶって来るか迷ったんですけど、まだ僕は髪もありますからやめました(笑)。
あなたの人生にとって帽子とは?
昔は「テレビで帽子をかぶっていると失礼」、みたいな空気もりましたから。しかもこちとらそれに加えロン毛にサングラス姿でしょ。ただこのトシになると、先方も「そんなこともうどうでもいい」って思うんでしょうね。今は平気で帽子をかぶって出てます。そうそう、夏になると“老いるショック”のせいか、水かけられた犬みたいに汗をすごくかくんです。出来ましたらこの先も一年中かぶり続けたいので、こういうフェルトハットだけど涼しい素材の帽子を、CA4LAさんに開発してもらえないですかねえ(笑)。
撮影:清水健吾
編集:武井幸久(HIGHVISION)
みうらじゅん / Jun Miura
1958年京都府生まれ。1980年に武蔵野美術大学在学中に漫画家デビュー。1997年「マイブーム」で新語・流行語大賞受賞。2005年日本映画批評家大賞功労賞受賞。2018年 仏教伝道文化賞 沼田奨励賞を受賞。著書に『マイ仏教』、『「ない仕事」の作り方』、『人生エロエロ』など多数。近著には『通常は死ぬ前に処分したいと思うであろう100のモノ』がある。「みうらじゅんFES マイブームの全貌展」も巡回中。
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