帽子の肖像 Profile.02 渡辺俊美
帽子が本当に似合う人。それは格好良く年齢を重ねた大人かもしれない。 スタイルの変遷、年輪が醸し出すものが、帽子をかぶった肖像に現れる。 連載「帽子の肖像」では、2枚のポートレート写真、そして5つの共通質問に対する短い言葉から、帽子の達人たちの肖像を浮かび上がらせます。 第2回目は、TOKYO No.1 SOUL SETやTHE ZOOT16でも活躍するミュージシャンの渡辺俊美さん。
5 QUESTIONS TO
渡辺俊美
“自分に似合う帽子探しは、女の子との出会いと似ています。”
あなたが帽子をかぶり始めた時のことを教えてください。
高校生の時ですね。当時からバンドをやっていたけど、地元(福島県)にはライブハウスもないから結婚式場を借りてライブをすることになって、その衣装として原宿の竹下通りで黒いハットを買いました。4、5千円だったと思います。剣道部で坊主頭だったので、髪を立てたり色も染められないから、ハットをかぶってロックスター気分。田舎で帽子は浮きましたね(笑)。
あなたが憧れる(憧れた)帽子をかぶる人とは?
自分が最初に買ったレコードはジュリー(沢田研二)の「勝手にしやがれ」。あのハット姿に憧れましたよ。その後はショーケン(萩原健一)、そこから伊丹十三と池波正太郎の本でさらに帽子の世界を教えてもらいました。“男の作法”を追求していくと、池波正太郎に行き着くんです。池波さんがどういう食事をして、どういう帽子をかぶっていたかも影響を受けましたね。ミュージシャンで言えばやっぱりザ・クラッシュのポール・シムノンかな。
あなたが帽子をかぶる時に気をつけていることを教えてください。
帽子をかぶる時に、髪に油(ポマード)を塗っておきたいです。帽子をかぶっている時も脱いだ時も、ちゃんと髪の毛がセットしてあるのが理想。やっぱりご飯を食べる時には帽子を脱ぐのが紳士ですから。自分に似合う帽子探しは、女の子との出会いと似ています。一目惚れする時もあるし、かぶってから気づくこともある。でも帽子って、かぶっていれば似合ってくるし、かぶっていないと似合わない。その中で自分に似合う帽子が見つかるんですよ。
今日かぶっている帽子について、教えてください。
これは去年CA4LAさんとコラボレーションで作ったもの。それまで自分はトラディショナルな形の帽子をかぶることが多かったのですが、少しハズして、ツバはフラットで少しクラウンは高め、カントリーっぽくてカンカン帽みたいなシルエットにしてもらいました。去年久しぶりにTHE ROOT16のニューアルバム(『ROOTS16』)を出したので、自分にも何か新しいものを取り入れようと思って作りましたが、今はこれが自分のトレードマークになっていますね。
あなたの人生にとって帽子とは?
僕の場合は、ライブで帽子が取れるとかつらが取れたような気になります(笑)。だからもう体の一部でもあるんでしょうけど、どちらかというと「友達」ですよね。「お前がいてくれるから俺が成り立つ」みたいな。帽子は僕のキャラクターを形成していて、遠くから見ても「渡辺俊美だ」と分かるようにしてくれる存在でもあります。地方のライブに行くと、僕みたいな帽子を被った似た格好の人が結構いるんですよ。僕は親しみを込めてそういう人たちのことを「俊美っ子クラブ」の人と呼んでいるんですが(笑)、それにはこの帽子のイメージも大きいと思いますね。
撮影:清水健吾
編集:武井幸久(HIGHVISION)
ミュージシャン / 1990年、TOKYO No.1 SOUL SETとしてデビュー。2002年より、TOKYO No.1 SOUL SETの活動と平行し、ソロユニット・THE ZOOT16としての活動をスタート。2011年には同じ福島県出身のサンボマスターの山口隆、THE BACK HORNの松田晋二、風とロックの箭内道彦とともに猪苗代湖ズに参加。さまざまなプロジェクトのほか、他のミュージシャンへのが曲プロデュースや楽曲提供を行っている。 渡辺俊美&THE ZOOT16 / NEWアルバム『NOW WAVE』7inch NEWシングル 発売中