帽子の肖像 Profile.07 大木伸夫(ACIDMAN)
帽子が本当に似合う人。それは格好良く年齢を重ねた大人かもしれない。 スタイルの変遷、年輪が醸し出すものが、帽子をかぶった肖像に現れる。 連載「帽子の肖像」では、2枚のポートレート写真、そして5つの共通質問に対する短い言葉から、帽子の達人たちの肖像を浮かび上がらせます。 第7回目は、ハットがトレードマークになっているミュージシャン、ACIDMANの大木伸夫さん。
5 QUESTIONS TO
大木伸夫(ACIDMAN)
“時間と共に自分のアイデンティティのひとつになっていく。だんだん細かいところまで気になってきて、こだわりの楽しみが出てくるんですよ”
あなたが帽子をかぶり始めた時のことを教えてください。
僕らは最初4人バンドでヴォーカルが別にいたのですが、1999年にそのヴォーカルが抜けて僕が担当するようになったことがきっかけです。見た目からバンドが印象に残るのは何だろうと金髪にしたりと試行錯誤したのですが、「全員で帽子をかぶろう」と決めて、インディーズの頃は色んな帽子をかぶりました。メジャーデビューの3部作のミュージックビデオで、1曲目はかぶらない、2曲目はニットキャップ、3曲目がハットと試してみて、どれが一番反応がいいかを確かめた結果、ハットの反応が一番良かったので、それをトレードマークにすることにしたんです。
あなたが憧れる(憧れた)帽子をかぶる人とは?
LOW IQ 01のイチさんです。そもそもハットをかぶるきっかけは、イチさんがSUPER STUPIDでハットをかぶっていたのが印象に残っていたから。日本人離れした世界観を持っている方で、とにかくカッコよかったですね。今でこそ仲良くさせてもらっていますけど、憧れでした。MASTER LOWのときのロックインジャパンのステージで、杖を持ちながらセットアップにハットをかぶっていたのもかっこよくて。その頃は僕もまだ帽子を何にしようか迷っていた時期で、それを見て「ハットにしよう!」と決めたんです。
あなたが帽子をかぶる時に気をつけていることを教えてください。
よく[ボルサリーノ]のハットをかぶるのですが、ツバを下げる正式な?かぶり方ではなく、ツバを上げるスタイルが好きですね。ブリム自体も長い方が好き。ハットって最初はちょっと勇気が要るじゃないですか。でも時間と共にそれが自分のアイデンティティのひとつになっていく。だんだん細かいところまで気になってきて、こだわりの楽しみが出てくるんですよ。
今日かぶっている帽子について、教えてください。
今日は[ワコマリア]のハットです。[ボルサリーノ]が好きだったんですが、イタリアの本社が倒産したと聞いて、これからどうしようかなと思っていたら、ワコマリアのものが僕にはピッタリでした。ステージで常にかぶっているのは[CA4LA]さんに作っていただいたもの。ライブってすごく汗をかくので、ステージの時のハットはユニフォームのような、“鉢巻”のような感覚なんです。
あなたの人生にとって帽子とは?
アイデンティティのひとつ。初めて見るバンドって、名前なんて覚えてもらえない。見た目だけでも覚えてほしいからという理由で帽子をかぶり始めたのですが、ハットをかぶってからすごく評判が良くなりました。ステージに立つときはかけがえのないものになっているし、今の自分があるのもハットのおかげだと思っています。ビジュアル面で一番僕を形成してくれているものですよね。
撮影:清水健吾
編集:武井幸久(HIGHVISION)