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帽子の肖像 Profile.15 Char

帽子が本当に似合う人。それは格好良く年齢を重ねた大人かもしれない。
スタイルの変遷、年輪が醸し出すものが、帽子をかぶった肖像に現れる。
連載「帽子の肖像」では、2枚のポートレート写真、そして5つの共通質問に対する短い言葉から、帽子の達人たちの肖像を浮かび上がらせます。
第15回目は、ミュージシャンでギタリストのCharさん。

 

5 QUESTIONS TO

Char


“「帽子かぶったらCharになる」って言われてきたから、たぶんオレ棺桶の中でも帽子かぶってると思うよ”

 

あなたが帽子をかぶり始めた時のことを教えてください。

兄貴がレコードを買ってきて中学頃から洋楽を聴くようになったんだけど、70年代頃から髪の毛を伸ばして帽子をかぶるミュージシャンが増えてきた。中でもCREAM時代の(エリック・)クラプトンが屋外でメンバー撮影しているジャケットでハットをかぶっている姿がもうカッコよくて。真似したかったけど、髪の毛が長くないと似合わない。だから高校進学は髪型が自由なところしか考えなかった。高校入ってから金貯めてロンドンに行って、キングスロードあたりで初めて買ったのがキャスケット。ハットで最初に買ったのは、原宿あたりで見つけたHang Tenのものだったかな。

 
あなたが憧れる(憧れた)帽子をかぶる人とは?

ハットだとクラプトン、キャスケットだと黒人のソウルシンガーのダニー・ハサウェイ。あとは中3の頃に日比谷の映画館で観た『ウッドストック(愛と平和の3日間)』で、スライ&ザ・ファミリーストーンがビビッドなフェルトのソフト帽に、とんでもなくハデな鳥の羽根をつけていたのは衝撃だった。当時はベトナム戦争の背景だとかも分からず、音楽とファッションだけ見ていたな。「早くアメリカ行きてえ」って。16、7歳の頃にはオレも髪の毛伸ばしてハットかぶって、フレアパンツにロンドンブーツ。当時東京でもオレの格好は浮いてたよ。

 
あなたが帽子をかぶる時に気をつけていることを教えてください。

帽子って何でもいいと思ったら大間違いで、その人の顔の形や髪型、頭の形に似合うものがある。あと首の長さも結構大事な気がする。なかなかそれを分かってかぶっている人は少ないんだよ。ライブの帽子も衣装に合わせて自分で決めてるよ。形を変えたり、テープを変えたり、テープを後ろに垂らすアレンジをしたり、スライみたいに羽をつけたりもする。ツアー中は意外と本番前の気分で変えることも多いね。あと帽子はやっぱりメンテナンスが大事。ライブやって汗かいたら、ちゃんと湿気取りを入れたり。全部自分でやってるよ。

 
今日かぶっている帽子について、教えてください。

このハットはある意味でオレのオリジナル。下北沢あたりの若者向けの帽子屋でディスプレイされていたのがオレの頭に似合うやつだった。でも「汚れているので売り物じゃないんです」って店員が言うんで、「売ってよ」って食い下がったら半額にしてくれた(笑)。クラウンの高さ、ツバの広さ、絨毯みたいな生地も気に入ったけど、ボロボロになったらもう買えないと思ったので、知り合いの帽子屋に頼んで同じように作ってもらったんだ。そのうち売り出すかもしれないけど、似合うかどうかオレがチェックして合格したヤツだけ買えるようにしようかな(笑)。

 
あなたの人生にとって帽子とは?

雨や日差しから頭を守る発想は昔からあったと思うけど、帽子はそれがだんだんファッションになったのも面白いし、究極のオシャレなんじゃないかなと思ってる。オレもこれまでたぶん数百の帽子をかぶってきたから、こういう企画に声かけてくれて嬉しいよ。この間、中学生の孫と一緒に買い物行ったら、安いけどオレに似合いそうな帽子があったんだ。かぶった瞬間に孫が「あ、Charだ」だって(笑)。昔からいつも「帽子かぶったらCharになる」って言われてきたから、たぶんオレ棺桶の中でも帽子かぶってると思うよ。
 

撮影:清水健吾
編集:武井幸久(HIGHVISION)

Char / チャー

1955年東京生まれ。本名・竹中尚人 (たけなか ひさと)。ZICCA REDORDS 主宰。10代からバックギタリストのキャリアを重ね、1976年シングル“Navy Blue”でデビュー。同年に1stアルバム『Char』を発表。以降日本を代表するギタリスト、シンガーソングライターとして活躍。2016年、ギターマガジン誌「ニッポンの偉大なギタリスト100」にて1位。2020年、同誌「ニッポンの偉大なギター名盤」にて、1stアルバム『Char』が一位に選ばれる。2021年に16年ぶりのオリジナルアルバム『Fret to Fret』を発表し、デビュー45周年武道館公演を開催。2022年4月、同公演の映像作品を発売。


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