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帽子の肖像 Profile.05 INO hidefumi

帽子が本当に似合う人。それは格好良く年齢を重ねた大人かもしれない。 スタイルの変遷、年輪が醸し出すものが、帽子をかぶった肖像に現れる。 連載「帽子の肖像」では、2枚のポートレート写真、そして5つの共通質問に対する短い言葉から、帽子の達人たちの肖像を浮かび上がらせます。 第5回目は、ピアニスト、シンガーソングライターのINO hidefumiさん。


 
 

5 QUESTIONS TO

INO hidefumi

“ファッションとしての帽子が欲しくなったのは、20歳のとき。 音楽が入り口でした”

   

あなたが帽子をかぶり始めた時のことを教えてください。

自分で帽子を選んでかぶったのは、子供の頃の巨人軍のキャップが最初ですね。僕は宮崎県出身で、王・長嶋全盛時代の巨人軍が毎年キャンプに来ていたので、宮崎の人はみんな巨人ファンでした。ファッションとしての帽子が欲しくなったのは20歳のとき。音楽が入り口でしたね。ドクター・ジョンというニューオリンズのピアニストがかぶっていた[ジェームズ・ロック]のキャスケットが欲しくて。探して見つけたけど、高くて当時は買えなかったので諦めて、似たような安いのを買ってピアノ弾いていました。

 

あなたが憧れる(憧れた)帽子をかぶる人とは?

僕は昔からハードボイルド小説が好きで、特にレイモンド・チャンドラーの小説の中に出てくるフィリップ・マーロウという探偵がいつも帽子を身につけているのですが、それが自分も[ボルサリーノ]などのハットをかぶるようになったきっかけですね。映画などでもそうですけど、帽子はタバコと一緒で、登場人物の心象風景を表現する小道具として使われていました。例えば取り調べの時にイライラしてハットを持ってクルクル回すシーンとか、深くかぶって表情を見せないようにする場面とか、よく覚えています。あとは同じ探偵ですけど、『探偵物語』の松田優作さんにも影響を受けましたね。

 

あなたが帽子をかぶる時に気をつけていることを教えてください。

家には100個くらいの帽子があって、少し前までは普段もライブの時も必ずハットはかぶっていました。気にしていたのはサイズ感で、わりと大きめのサイズをかぶることが多かったですけど、最近髪を切って、サイズが合わなくなったのでかぶらなくなっていました。「髪の毛を切った」というのも、少し薄くなってきたように感じたから短くしたんですね。でも最近さらに薄くなってきた気がするので、「そろそろまたかぶらないといけないな」と思っていたところ(笑)。もう少し格好いい理由の方がいいんですけどね。

 

今日かぶっている帽子について、教えてください。

これは10年以上前に初めて買った[ボルサリーノ]。当時にしてはかなり広めのツバで、こういうのを探していたけどなかなか見つからなくて、[CA4LA]の代官山のお店でやっと見つけて一目惚れで買いました。店員さんに言われた通りに長年手入れをしてきたので、結構きれいな状態じゃないですか。当時は結構高かったですね。買ったときはちょっと大人になった気分でした。

 

あなたの人生にとって帽子とは?

「帽子は帽子」です。山があるから登りたくなるのと同じですよ。

 

撮影:清水健吾 編集:武井幸久(HIGHVISION)

   
INO hidefumi / イノ ヒデフミ

宮崎県延岡市生まれ。鍵盤奏者、シンガーソングライター、アレンジャー。フェンダーローズをメインに据え、様々な要素を取り入れた独自の世界観の音楽を追求している。2002年に「イノセントレコード」を立ち上げ、レコード会社にもプロダクションにも所属せずインディペンデントで活動を開始。2006年リリースの1st.アルバム『Satisfaction』がスマッシュヒット。現在までに7枚のアルバムを送り出し、2020年秋には8枚目の最新アルバムのリリースを予定している。最新シングルは2020年2月28日発売の“スコール / 永遠的スローモーション”。 https://www.innocentrecord.net