帽子の肖像 Profile.09 渋川清彦
帽子が本当に似合う人。それは格好良く年齢を重ねた大人かもしれない。 スタイルの変遷、年輪が醸し出すものが、帽子をかぶった肖像に現れる。 連載「帽子の肖像」では、2枚のポートレート写真、そして5つの共通質問に対する短い言葉から、帽子の達人たちの肖像を浮かび上がらせます。 第9回目は、俳優の渋川清彦さん。キャスケットを選ぶ理由、そしてそれを少しナナメにかぶる理由とは?
5 QUESTIONS TO
渋川清彦
“やっぱ「ちょっとナナメにしていると不良」っていうイメージは 昔からあるんでしょうね”
あなたが帽子をかぶり始めた時のことを教えてください。
そもそもは自分が天パー(天然パーマ)だったからですね。ロカビリーバンドをやっていたので、リーゼントをしているとき以外は天パー隠しでハンチングかぶるようになって。ロカビリーやっている人ってハンチングの人が多いんですよ。例えばジーン・ヴィンセント&ヒズ・ブルー・キャップスとかは、ジーン・ヴィンセント以外は全員ブルーのハンチングとかね。(出身の群馬県)高崎の「桃色天国」とか「カルコーク」っていうロカビリーショップで買ったハンチングをかぶっていました。東京に出てきた18、9(歳)の頃かな。
あなたが憧れる(憧れた)帽子をかぶる人とは?
昔のアメリカの写真とかで、タンクトップにワークパンツ穿いて、サスペンダーでハンチングとかキャスケットかぶってる労働者の姿を見てカッコいいなと思ってましたね。あとは映画とかにも影響されています。例えば『ボルサリーノ』っていう映画でアラン・ドロンはハットだけど、フランス人のジャン・ポール・ベルモンドはやっぱハンチングなんだ、とか。ジェームス・ディーンも好きな写真の中でハンチングかぶってましたし。あとはやっぱ矢吹丈(漫画『あしたのジョー』)かな。ちょっとずらしてかぶってるのがカッコ良かったですよね。
あなたが帽子をかぶる時に気をつけていることを教えてください。
帽子によって多少変わるんですが、自分は深くかぶるよりも、額の髪の根元を出してかぶるのが好きですね。それでちょっとナナメにしていることが多いかもしれない。あまりきちっとしない感じで、さっきの昔のアメリカの労働者のような感じというか。時代劇もよく見ると面白いんですが、髷(マゲ)も普通は頭の真ん中にあるんですが、粋な遊び人なんかは斜めにずらしたりとかして。それも帽子と近いのかなと思ったりしますね。やっぱ「ちょっとナナメにしてると不良」っていうイメージは昔からあるんでしょうね。
今日かぶっている帽子について、教えてください。
これは知ってるヤツが一人で作っている[SOLARIS&Co.(ソラリス)]というブランドのものです。ハンチングはたぶん実家にあるのも合わせると20個くらいは持っていると思うんですけど、だいたい普段かぶるのはいくつかに決まってて、3年前くらいに買ったこれが一番気に入ってるかも。レザーでユーズドっぽい感じもあって、好きですね。あとは一人でやってるのを応援したいっていうのもあると思います。
あなたの人生にとって帽子とは?
最初に言ったように天パーなんで、ちゃんと髪の毛をセットしたら帽子なしでも出かけるんですけど、何もしない時はかぶらないとソワソワする感じがあるんですよね(笑)。帽子がないと恥ずかしいというか、出かけたくない。だから自分にとって必要なものではあるんだけど。でもやっぱカッコいいですからね、帽子って。
撮影:清水健吾
編集:武井幸久(HIGHVISION)
1974年群馬県渋川市生まれ。KEE名義でモデル活動を開始し、ファッション誌等で活躍。1998年に豊田利晃監督の『ポルノスター』で映画デビューし、俳優としての活動をスタート。名バイプレイヤーとして多数の映画に出演し、第37回 ヨコハマ映画祭 主演男優賞、第32回 日刊スポーツ映画大賞・石原裕次郎賞 助演男優賞 、第34回 高崎映画祭 最優秀助演男優賞などの受賞歴を持つ。ディケイド所属。