CA4LA MUSIC CONNECTION vol.11
9mm Parabellum Bullet
爆発的なライブの本質を掴むまでの転機
アーティストたちにとって、作品を生み出す過程やその時々の活動の源泉には、必ず何かの転機が存在している。
「CA4LA MUSIC CONNECTION」は、アーティストのみなさまに、ご自身の活動のターニングポイントになったことを取材させていただき、お答えいただくという連載企画。
第11回目にご登場いただくアーティストは、9mm Parabellum Bullet。
2005年のインディーズデビュー以降、メンバーが暴れ回る爆発的なライブと歌謡曲的なニュアンスも持つポップなメロディーの融合が話題を呼び、2007年にメジャーデビューを果たした9mm Parabellum Bullet。2009年には日本武道館でのワンマンを成功させ、2013年には事務所を独立し、さらに活動の幅を広げていきました。2016年にはギターの滝善充さんが腕の負傷のためにライブ活動のみを一時休止するアクシデントがありながらも、サポートメンバーを迎えてライブを続行し、2017年には渾身の力作『BABEL』を発表。滝さんの復帰以降はサポートメンバーも交えた新たな9ミリとしてのライブを確立しつつ、その本質的な部分はぶれることなく、キャリアを重ねています。今年の夏には記念すべき9枚目のアルバムの発表を控えるなか、フロントマンの菅原卓郎さんにこれまでのライブに対する意識の変遷と、CA4LAとのコラボアイテムについてお伺いしました。
Text by Atsutake Kaneko
Photo by Kana Tarumi
Interview:菅原卓郎
菅原 半分は悪ふざけというか、最初は「こうやった方が面白いね」みたいな感じでした。バンド組み立ての頃はライブ終わりにかみじょうくんの家で反省会をして、その日のライブのビデオを見ながらカップラーメンを食べて、ビールを飲んでたんですけど、あるとき「今日滝めちゃめちゃ暴れてたよね」みたいな日があって、「やっぱりみんな暴れた方がいいね」っていう話になったんです。その頃横浜のライブハウスによくENDZWECKとかを見に行ってて、あのへんのシーンのバンドはみんなめちゃくちゃ暴れてたんですよ。暴れまくって、全然弾けてない瞬間とかあるのに、それでもかっこいいってところにやられてたから、自分たちもそういうライブがしたいなって。そこが9ミリのアイデンティティのスタートというか、「とにかく暴れよう、弾けるかどうかは二の次」みたいな感じでしたね。
菅原 そもそも最初はお客さんいなかったので(笑)。対バンの人が見てくれたり、仲間が見てくれて、「すげえ暴れてたね。今日はよかったんじゃない?」みたいに言ってもらうことが自分たちの達成感になってたかな。
菅原 2006年の年末にRADWIMPSのツアーに出演させてもらって、そのとき知ってくれた人がたくさんいたんだと思うんですよね。その前にもインディ時代のアルバムが、当時のインディのバンドとしてはすごくたくさんCD屋さんに並んだり、ちょっとずつ知名度が上がっていって、そこにRADWIMPSのツアーと、あと「COUNTDOWN JAPAN」への出演もあって。
菅原 そう思ってくれてたのかもしれないですね。それまでは対バンとかイベントばっかりで、自分たちだけのお客さんの前で演奏する熱気というものを感じたことがなかったけど、nestのときは「これがワンマンか」って、純度の高い9ミリのライブを初めて体感した感じでした。ただ、もちろんお客さんがいっぱいいて嬉しいなとは思ったけど、だからといってコール&レスポンスをするようなバンドでもないし、自分たちがやることに変わりはなくて、とにかく激しく、エキサイティングなライブをしようっていう。お客さんもきっとそういうライブが見たくてライブに来て、そこが合致したんだと思うんですよね。「なんじゃこりゃ?」って、ちょっと笑っちゃうぐらいの感じというか。
菅原 「日本のロックバンドにとって、武道館はひとつの目標」みたいなのって、9ミリはそこまで意識してなくて。なので、それまでずっとライブハウスでやってきたのと同じように、激しいステージングと曲の面白さをこのサイズでも両立できたらすごいよねって考えてました。で、実際当日はすごいエネルギーで、ライブの最後のほうで“Black Market Blues”をやったんですけど、すごい熱気に赤の照明も加わって、ウワッと燃え上がるような、地獄の鍋の底みたいな(笑)、ステージからそんな風に見えたのはすごく覚えてます。
菅原 メジャーで2枚アルバムを出して、ツアーではいろんな会場がソールドアウトになったりしてたから、いろいろ考えてたとは思うけど……。でも今振り返ると、やっぱり自分たちの曲はコール&レスポンスをするわけじゃないし、「みんなで歌おう」って感じでもないから、ファンとどうやってコミュニケーションをするかって、さらに激しいステージングをして、それで盛り上がってくれたらって感じで、完璧な達成感を得るのは結構難しかったときもあった。「演奏は上手くいかなかったけど、ライブとしてはよかった」とか、その逆で「演奏はすごくよかったのに、ライブとしてはあんまり盛り上がらなかった」とか、そういうギャップに一個ずつ対処しながら、武道館まで行った感じだったかな。
菅原 あの曲は歌詞に関しても、ただ散文的な歌詞じゃなくて、どうやったらサウンドだけじゃなく、言葉でも聴いた人に作用できるかを考えて、それができ始めた最初くらいの曲だったから、エネルギーのピークがそこに集まったんでしょうね。
菅原 そろそろ自分たちで責任を持ってやるのがいいんじゃないかと思ったんですよね。もともとHi-STANDARDとかBRAHMANとか、そういうシーンを見て育ってきていて、自分たちのことを自分たちでコントロールできるのならそれが一番いいと思っていたので。それで、ちょうど2014年にバンド結成10周年としてもう一回武道館をやることが決まってたから、そのタイミングで独立して、武道館をやれたら熱いんじゃないかっていうのもあったり。あとは2013年に『Dawning』っていうアルバムを作って、そのときのバンドがやれることを全部出し切ったようなアルバムになったと感じていて。「セルフプロデュースでこの完成度のものが作れるなら、もう自分たちでできるんじゃない?」っていう、手応えを感じたんだと思います。
菅原 表面的にはそこまで大きくは変わらなかったと思います。9ミリは基本的に周りからの影響をそんなに受けないタイプで、そのころも「やっぱり9ミリは9ミリだな」と思ったっていうか。バンドとしてはすごく充実していて、ライブパフォーマンスにも自信があって、ただ闇雲な感じではなく、「これを見せれるぞ」っていうことを、迷いなく高いレベルでやれてたんじゃないかなって。
菅原 新しいスタイルが出てくると、やっぱり気にはなるじゃないですか? なので、ちょっとそういうアレンジをやってみようかなって、考えたりはするんですけど、それをやると途端に「らしくなさ」が出てきちゃうバンドなんですよ(笑)。4つ打ちのダンスロックが流行ってるときに、そういう曲をやってみても、「何か違うな」ってなって、結局みんなでリード曲を選ぶときも、流行りとは関係ない、自分たちがやって光る曲が自然と選ばれてたんですよね。そういう意味では、ガラパゴス状態でいいバンドだとずっと思ってたから、独立したことによって、完全にひとつの島だぞっていう(笑)。
菅原 自分たちはすごく運が良かったとも思うんですけど、ときどき冗談半分で言ってたのは、「いつ売れてもいいように、ちゃんとしておこう」ってことで。チャンスが来たときに、自分たちがぶれてたらそれを逃してしまうから、とにかくまずはちゃんと作品を作る。そこはすごく考えてましたね。
菅原 実は、休止しようと思ったんですよ。ツアーの最中に滝の調子が不安定で、「このツアーが終わったら活動を一度止めよう」って。でも、その次の週のライブが全然よくなくて、「前言撤回!」って言って。これで休止するのは納得いかない、こんな状態で止めれないから、とにかく自分たちにできることをやれるだけやってみようって。なので、滝はライブ活動のみ一時休止として、サポートギターを入れてライブを続けることを決めました。最初は大変だったけど、「やれるだけやろう」っていうマインドがセットされてたからやれたし、あともうひとつ大きかったのは、滝がただライブ活動を休止しているのではなく、すごい力を注いで『BABEL』というアルバムを作ってくれたことでした。
菅原 そうなんです。あのアルバムは99.8%くらいを滝が作って、それをバンドの演奏に移し替えたアルバムで。すごく珍しいんですけど、歌詞のコンセプトとかヒントも滝が用意してくれて、それだけひとつ凝縮したものを作るぞっていう気持ちがあったんだと思う。なので、ツアーの内容も前半は『BABEL』の再現ライブとして、サポートギター2人と5人体制で、後半はサポートギター1人と4人体制で普通にライブをしたんですけど、パートによっては滝がレコーディングで弾いた音源を出して、それに合わせて演奏をして、滝はステージにはいないわけだけど、ときどき「今すごく9ミリだな」って感じる瞬間があったんですよね。9ミリがめちゃくちゃいいライブをしてるときの感じが確かにあって、普通は「このメンバー4人じゃないと」とかあると思うけど、それを超えた場所に「バンドらしさ」というものがあるのかもしれないと思ったんですよね。
菅原 「9ミリさん」がそこにいるんですよね。長くやってるバンドで、もうオリジナルのメンバー誰もいないのに、でもバンド名は変わらないバンドとかいるじゃないですか? だから、メンバーどうこうよりも、大事なのは曲自体と、それをどう表現するかっていうことなのかもしれないなって。
菅原 『BABEL』は情念の塊みたいなアルバムだから(笑)、すごいものを作ってたんだなって、改めて思いました。ある種アスリート的な演奏を要求されるんだけど、でもそういう作品じゃないと前に進もうと思えなかったと思うし、あのアルバムを作ったことによって、それ以降作詞や作曲の仕方も変わってきたから、そういう意味でも大きな作品でした。
菅原 不思議とその当時のようなものを曲から要求されてる感じがしました。『BABEL』のときは全然暴れられないんです。ちゃんと弾かなきゃいけないから。でもインディの曲はすごく余白があるから、ワー!ってステージを駆け回れて、でも演奏はめちゃくちゃ上手くなってるんですよ。自分たちで言うのもなんだけど(笑)。
菅原 昔は演奏よりステージングに走っちゃって、「今日ラフプレイばっかりでごめん」みたいなことも言ってたけど、今はそういうある種のラフな部分と、ライブとしての楽しさが高いレベルで成立してるなって思います。
9mm Parabellum Bullet
2004年3月横浜にて結成。
メンバーは菅原卓郎(Vo・G)、滝 善充(G)、中村和彦(B)、かみじょうちひろ(Dr)。 2枚のミニアルバムをインディーズレーべルからリリースした後、2007年Debut Disc「Discommunication e.p.」で メジャーデビュー。 2009年9月9日、初の日本武道館公演を開催。 結成10周年を迎えた2014年、日本武道館2Days公演を開催し、初のBest Album「Greatest Hits」をリリース。 2016年自主レーべル”Sazanga Records”を立ち上げ、その年に発表した「インフェルノ」はテレビアニメ『べルセルク』の第一期オープニングテーマに、また翌年に発表した「サクリファイス」は同アニメの第二期オープニングとなった。 メジャーデビュー10周年を迎えた2017年、5月に7thアルバム「BABEL」リリース。 2018年には期間限定無料ダウンロードというバンド初の試みを行った「キャリーオン」(2018年全国公開映画 『ニート・ニート・ニート』主題歌)と、9月に開催した「カオスの百年TOUR」会場限定シングルとして「21g/カルマの花環」を発表した。 バンド結成15thアニバーサリーイヤーとなった2019年には、4月に東京・大阪にて野音フリーライブ開催、シングル「名もなきヒーロー」映像作品「actVII」、8枚目となるオリジナルアルバム「DEEP BLUE」をリリースし、全10 公演の「FEEL THE DEEP BLUE TOUR 2019」を開催した。 2020年には全18アーティストが参加した初のトリビュート「CHAOSMOLOGY」とシングル「白夜の日々」をリリー ス。 2021年、前年に開催予定だった「カオスの百年 TOUR 2020~CHAOSMOLOGY~」を内容を新たに、二部構成で開催。第1幕は「BABEL」再現ライブ、第2幕は「Gjallarhorn」「Phantomime」2枚の再現ライブを4人で披露 した。7月には新曲「泡沫」を配信リリース。 2022年夏には、2019年以来約3年ぶり通算9枚目となるオリジナルアルバム「TIGHTROPE」のリリースが決定。アルバムリリースに伴い全国ツアーも開催決定。
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RELEASE INFO
2022年夏に2019年以来約3年ぶり通算9枚目となるオリジナルアルバム「TIGHTROPE」のリリースが決定。9th Album「TIGHTROPE」からの先行配信第一弾として2022年5月9日(月)に「One More Time」を配信リリース。
また、先行配信第二弾として2022年6月9日(木)に「Spirit Explosion」も配信リリースとなった。
LIVE INFORMATION
9mm Parabellum Bullet presents「Walk a Tightrope Tour 2022」9月9日(金) Zepp Osaka Bayside OPEN17:30/START18:30
9月11日(日) Zepp Nagoya OPEN16:30/START17:30
9月19日(月・祝) Zepp Fukuoka OPEN17:00/START18:00
9月23日(金・祝) 仙台 GIGS OPEN16:30/START17:30
10月2日(日) Zepp Haneda OPEN17:00/START18:00
10月9日(日) Zepp Sapporo OPEN16:30/START17:30
<チケット プレオーダー2次先行>
受付期間:~6月13日(月)23:59まで
受付URL:https://eplus.jp/9mm22tour/