帽子の肖像 Profile.23
MURO
スタイルの変遷、年輪が醸し出すものが、帽子をかぶった肖像に現れる。
連載「帽子の肖像」では、2枚のポートレート写真、そして5つの共通質問に対する短い言葉から、帽子の達人たちの肖像を浮かび上がらせます。
今回は“King of Diggin’”として知られるDJ、プロデューサーのMUROさんが登場。
MUROさんが帽子をかぶり始めた意外な原点とは?
MURO
“お気に入りの帽子を買うと、それに合わせて服を選んだり、買ったりするんです”
あなたが帽子をかぶり始めた時のことを教えてください。
小さい頃から帽子は好きでした。僕は小2から高1まで爺ちゃんと住んでいて、とても爺ちゃんっ子だったのですが、その爺ちゃんがすごく帽子が似合う人で。キャップ、ハンチング、ハット。その日の服装に合わせてビシッと似合う帽子を選ぶんです。それに憧れて少し背伸びして似たような帽子も買ったし、お下がりももらいました。あと、お袋が編み物が好きだったので、“タム”はよく編んでくれました。ラップをやっていた頃は、お袋が編んだタムをかぶっていたんですよ。僕の帽子好きは、家族の影響が大きいんです。
あなたが憧れる(憧れた)帽子をかぶる人とは?
一番憧れたのは間違いなく爺ちゃんです。背筋もピンとして、帽子姿もカッコよくて。爺ちゃんは神主だったので、早朝から祝詞(のりと)を捧げるような人だったのですが、ラップを始めたのも爺ちゃんの影響です。小さい頃から聞いていた祝詞は韻も踏んでるし、リズムの感じも似ていたので。実は「MUROと爺ちゃん」というラップを作ったのが最初なんです。そして高校生の頃には、LL・クール・JがKANGOL(カンゴール)のハットを2つ重ねてかぶっていたのにも衝撃を受けました。そこから随分KANGOLにハマりましたね。
あなたが帽子をかぶる時に気をつけていることを教えてください。
バランスは大事にしています。色、形、そして服との全体のバランス。90年代、2000年代はスニーカーに合わせて帽子を選ぶのが好きでした。プライベートでもずっと帽子はかぶっていて、昔は相当な数の帽子を持っていました。もちろんレコードほどじゃないですけど(笑)。今は人にあげたりして少し減りましたが、それでも100個くらいはあるのかな。帽子と服の色を合わせるコーディネートも好きですね。お気に入りの帽子を買うと、それに合わせて服を選んだり、買ったりするんです。
今日かぶっている帽子について、教えてください。
これは2年前くらいにNew Era®のショップで見つけたもの(フィッシャーマンキャップ)です。形、生地の厚み、色褪せていく感じも気に入っています。当時は誰も見向きもしないような場所に置いてあって、「人と被らなくていいな」と思って買いました。その後もずっと全然新作は出ないし、出ても少し仕様が変わったりしていたのですが、ある時僕のインスタに載せたら、ニューエラに問い合わせが凄かったみたいで。慌てて増産したと聞いています。先日同じお店に行ったら、店員さんの4名中3名がコレをかぶってて驚きました(笑)。
あなたの人生にとって帽子とは?
これはみなさん同じようなことを言われているかもしれないけど、“身体の一部”ですね。もう髪の毛をセットするようなものなので。髪の毛を切っても、翌日には帽子をかぶってしまいますし(笑)。最近は視力も落ちてきたのでメガネをかけるようになったのですが、今はメガネと帽子を合わせることができるのが、自分の中では新鮮です。90年代2000年代はやって来なかったスタイルなので。
撮影:清水健吾
編集:武井幸久(HIGHVISION)
MURO / ムロ
King Of Diggin’として知られる日本が誇るDJ。「世界一のDigger」として、プロデュース/DJ において活躍し、その活動の幅もアンダーグラウンドからメジャー、そしてワールドワイドに広げている。数多くのレーベルオフィシャルMIXも数多くリリース。DJ NORIとのDJユニット CAPTAIN VINYLでも活動。TOKYO FMでのラジオプログラム「MURO presents KING OF DIGGIN'」も2018年から続く人気番組。そのファッションのセンスも90年代から常に注目されている。
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