帽子の肖像 Profile.19 大塚明夫
帽子が本当に似合う人。それは格好良く年齢を重ねた大人かもしれない。
スタイルの変遷、年輪が醸し出すものが、帽子をかぶった肖像に現れる。
連載「帽子の肖像」では、2枚のポートレート写真、そして5つの共通質問に対する短い言葉から、帽子の達人たちの肖像を浮かび上がらせます。
今回は日本を代表する声優のひとりとして活躍を続ける大塚明夫さん。
大塚明夫
“僕もどこかで次元大介の帽子姿はインプットされていると思いますよ”
あなたが帽子をかぶり始めた時のことを教えてください。
高校生の頃だったと思います。僕はあまりニットキャップが似合わないですけど、どこかのお店でニットキャップに小さなツバのついた帽子を買ったら、自分でも「あ、なかなか決まってるじゃん」と。ファッション的な意識で帽子をかぶったのは、たぶんその時が最初ですね。それ以来プライベートで帽子をかぶることが増えました。お店では実際に頭に乗せてみて、自分で「いいな」と思ったものを買います。特に決まった形はなくて、帽子屋さんでもいろいろかぶってみるので、お店にとってはいい迷惑かもしれないですが(笑)。
あなたが憧れる(憧れた)帽子をかぶる人とは?
映画、それも洋画の登場人物の帽子が印象に残りますね。昔は『カサブランカ』のハンフリー・ボガードの帽子姿に憧れました。今も仕事やプライベートで観た映画の中で印象に残った帽子を、ついお店で探しちゃいます。次元大介(『ルパン3世』)の声を担当させてもらうようになりましたが、僕が小学生の時にテレビでファーストシーズンが始まって以来、ずっと夢中で観てきました。日本で育った男の子だったら、あのハットとタバコ姿には憧れたんじゃないですか。僕もどこかで次元の帽子姿はインプットされていると思いますよ。
あなたが帽子をかぶる時に気をつけていることを教えてください。
帽子はいま8個くらい持っていて、服装や気分によって変えています。夏は明るい色の方が涼しげだなとか、そんな程度ですけど。僕の場合、その日の服装を決めてから帽子は選んでいますね。8個あるといっても、せいぜい2つか3つのローテーションですよ。帽子をかぶる時に気をつけているのは、なるべくハットの上を持ってつままないようにしていることくらい。すぐにヨレヨレになっちゃいますからね。でも、ついクセでやっちゃうんだな(笑)。
今日かぶっている帽子について、教えてください。
これは4、5年前にCA4LAさんの代官山店で買ったものです。帽子に関してはブランドをあまり気にせず、自分の頭と顔、空気感にマッチしているかどうかで選びますね。これは……(帽子を裏返して)KNOXというブランドでした。CA4LAさんの別注モデルですか? 知らなかった。この帽子は結構な頻度でかぶっていますよ。最近の一番のお気に入りは、次元の声をやるようになって制作さんから頂いたコラボレーションモデルです。収録の時? ヘッドホンしないといけないから、帽子をかぶりながらは出来ないんですよ。
あなたの人生にとって帽子とは?
これまでも外出のときは近所に行く以外はほとんどかぶっていますから、相棒みたいなものでしたよね。でも僕はきっとどんどんハゲていくと思うんで(笑)、これからは“伴侶”になると思いますよ。
撮影:清水健吾
編集:武井幸久(HIGHVISION)
大塚明夫 / Akio Otsuka
1959年生まれ。東京都出身。文学座養成所を卒業し、声優として活動を開始。以降、日本を代表する声優のひとりとして、映画、アニメ、CM、ゲームの世界で活躍。また俳優としても活動している。映画ではスティーブン・セガールやニコラス・ケイジの吹き替え、アニメでは『ブラック・ジャック』、『攻殻機動隊』、ゲームでは『メタルギア・ソリッド』などが代表作だが、その出演作は非常に多数。著書に『声優魂』(星海社)など。
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