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帽子の肖像 Profile.01 菊池武夫

帽子が本当に似合う人。それは格好良く年齢を重ねた大人かもしれない。 スタイルの変遷、年輪が醸し出すものが、帽子をかぶった肖像に現れる。 連載「帽子の肖像」では、2枚のポートレート写真、そして5つの共通質問に対する短い言葉から、帽子の達人たちの肖像を浮かび上がらせます。 記念すべき第1回目は、日本が誇るレジェンド・ファッションデザイナー、菊池武夫さん。


 

5 QUESTIONS TO

菊池武夫

 

あなたが帽子をかぶり始めた時のことを教えてください。

17、8歳の頃から頻繁にかぶり始めましたね。最初は8枚ハギのハンチングや、1960年代に流行ったようなサイドがストレートで前にツバのあるものをよくかぶっていました。10代の終わりの頃に、横浜の「ポピー」という店で、スクールストライプのハンチングを見つけました。でも、それをかぶったらツバが少し短かったんです。帽子はいいけど、何となく自分の顔に合わないと思って、それを2センチ伸ばして作ってもらった。初めての帽子のオーダーです。その頃から帽子に本気になりだした気がしますね。

 

あなたが憧れる(憧れた)帽子をかぶる人とは?

僕は「親父の力」を物凄く感じていた子供でした。親父もそうでしたけど、昔、僕が子供の頃の上の世代の大人たちは、ほとんど帽子をかぶっていたんですよ。だから「なんで僕の世代の人は帽子をかぶらないのかな」と疑問に思っていました。子供の頃から「早く大人になりたい」と思っていたので、その象徴が帽子だったというのもあるかもしれないですね。

 

あなたが帽子をかぶる時に気をつけていることを教えてください。

一番気をつけるのは、自分の顔と帽子が合っているかどうか。木型のシェイプ、クラウンの高さ、ツバの長さとか、帽子には微妙にいろいろあるんです。だから自分の顔に合った帽子を探すのは実に難しい。それとね、ソフト帽を正式にかぶるなら、普通は前のツバを下ろしますよね。でも僕は一度も下ろしてかぶった記憶がなくて、常に上に上げていた。それが自分の顔に合っていると思っているから。普通の人は下ろしているのに、上げているということは、ちょっと反抗心が強い人なんじゃないかな。それかちょっとイカれてるというか。僕自身、自分をマトモな方だとは思っていないので、それを表すような気持ちもあったかもしれない。かぶり方も自分の表現のひとつですよ。

 

今日かぶっている帽子について、教えてください。

これはアメリカ・ニューヨークの[DOBBS(ドブス)]というメーカーのもので、今年の春に北海道に行った時に偶然見つけました。なんでこんなところに売っているんだろうって思いながら、お店でかぶってすぐに買っちゃった。前から同じようなものは沢山持っているんですけどね(笑)。

 

あなたの人生にとって帽子とは?

僕にとっては顔の一部なんです。帽子がないとまず落ち着かない。だからよっぽどのことがないと帽子は脱がないですね。これはきっと時に失礼にあたるんでしょうけど、もうしょうがないと思ってみなさんには我慢していただきましょう(笑)。

 

撮影:清水健吾
編集:武井幸久(HIGHVISION)

   
菊池武夫 / TAKEO KIKUCHI

ファッションデザイナー / 1939年生まれ。ファッションブランド[TAKEO KIKUCHI(タケオキクチ)の創業者であり初代デザイナー。1970年に[BIGI(ビギ)]を設立。現在も(株)ワールドにおいて、デザイナー、ディレクターとして活躍中。CA4LAともコラボレーションを行っている。